かすがい

頑なだったお母さんが、迷いに迷って決めた祖父母宅への里帰りを経て柔らかく変化していた。 「ひとりでいると全部自分でやらないとと思うし、世話になることは申し訳ないと思っていたけど、案外みんな赤ちゃんにどんどん構ってくれて、おじいちゃんにも来て…

ごはんどき

大皿にできた料理をざっと盛り、それをみんなでつついて食べる。足りなければおかわり自由で、さあどうぞ、というやさしくて自由な雰囲気。お話しながらみんなでつついて食べるごはんは、楽しさも格別だ。一人や二人増えたってたいして変わらない。あるもの…

里帰る

どさくさに紛れて四連休を取り帰省してきた。どさくさ、というのは四月末に二日、五月頭に二日連休を取るというもので、シフト上長期休暇を取っていることがばれにくい。この技を最近あみ出して、時折している。なんと小手先だけの技だとも思うが、連休が取…

因幡のリンゴ

リンゴの花びらが〜。リンゴの花と言われれば思い出すは「リンゴ追分」のこの出だし。以上。 昨日、「リンゴの花を見に行きませんか?」と同居人に誘われた。特段リンゴの花に興味も湧かなかったので一度は断ったのだが、なんと家から徒歩十分圏内にリンゴ園…

ナイスアシスト

取り上げ婆に、誰がなるかという話。 とにかく最初は脇目も振らず、赤ちゃん一〇〇例取り上げなさい、と言われていた頃。思えば一例でも多くお産を取り上げたい、と必死で突き進んでいたように思う。春から新人さんが来て、昔の自分を思い出す。お産は、チー…

民藝とトットリと私

事前に民藝関連の本を二冊読み、完全なる付け焼き刃で飛び込んだ日本民藝夏期学校は、思っていたよりも若い人が少なかった。後で聞いたところ、これでも例年より多いそうだ。 今回のテーマは「バーナード・リーチ 東と西を超えて」。英国人で画家・陶芸家で…

民藝といふもの

鳥取で行われた日本民藝夏期学校なるものへ参加してきた。新参者として感想文を書くという大役を仰せつかったのだが、いかんせん、大御所の先輩方が見る機関誌に載ると思うと肩に力が入ってしまっていけない。頭を整理するために、民藝について自分なりに思…

ご指名

ご指名というものを、受けた。クリニックに勤務して三年目にして初めてのことだ。二歳違いでお子さんを産む方が多いので、今年の目標としては自分が一人目のお産に関わった方が経産婦さんになった姿、その経過や変化をみたいと思っていた。しかし、いかんせ…

路地裏

筋肉トレーニングとして、日々少しずつでも文章を書いていこうと思っている。その一環としてのブログなのだが、毎日というのがやはりなかなか難しい。ほぼ日刊イトイ新聞を目指して、短くても良いのでほぼ日刊、最低週一回ぐらいのゆるい感じで続けていきた…

つながり

お産に立ち会ったお父さんは、多くの場合生まれてくる赤ちゃんに気持ちが向くことが多い。「オギャー」という一声で今までの不安や疲労が吹き飛び、全ての感情が赤ちゃんに集約するように感じていた。しかし、先日立ち会われたあるお父さんは違った。 「お腹…

愛でる

ここの所、床の雑巾がけをしている。雑巾がけなんて小学校の時の掃除の時間以来ではないかと思う。その頃は、床は汚いし雑巾は牛乳臭いし(記憶の中ではそうなっている)、男子はちゃんと掃除しないし(定番の)、雑巾がけなんて大嫌いだった。実家は絨毯だ…

迎春

春が来た。 新生活。引っ越しだ。二年間住んだマンションを引き払い、友人と三人でシェアハウスをすることにした。一人暮らしが大好きで、シェアハウス、ルームシェアなんて一生しない、する人の気が知れない、と思っていた私がおかしな巡り合わせだ。やはり…

さとええやん

「さとにきたらええやん」を見てから、胸のあたりのもやもやが消えない。見てすぐはなかなか言葉にならなかった。パンフレットを読み、SHINGO★西成の歌を改めて聞き、映画の場面を思い出して涙が溢れてきた。今まで自分が経験した色々な場面を反芻して、じわ…

雪こんこ

夜勤の間に雪がしんしんと降り続き、帰る頃には膝まであるAIGLEの長靴が全部埋まるくらい積もっていた。この長靴がこんなに実用的だということを、買って十年近く経って初めて実感した。 私が帰れるようにと職場の方が車の周りと窓に積もった雪をかいてくだ…

渇きの閾値

あまりに唇がカサカサするので、リップクリームを購入した。中高生の頃は友人につられて良く使っていたが、最近すっかりご無沙汰していた。無頓着になっていたが、見過ごせないほどの自分の唇のカサカサ具合に、そうだリップクリームでも買おう、と思い立っ…

穴場

誰かと一緒にいると、想定外の出会いや展開があっておもしろい。自分一人では特にアクションせずに終わることも、もう一歩違う行動が加わることにより、広がりがでる。アテンド側として自分の知っている知識では補えない場合、「なんとかしよう」という想い…

黒子の葛藤

出産を終えた産婦さんに、マッサージしながらお産の振り返りをする。肌に触れながら目線は合わせずに交わすことばのやりとりは緊張感から解放されるのか、思いもかけないことばが飛び出してきて、おもしろい。お産に一緒に立ち会っている人(主に夫や実母)…

リアルタイム

箱根駅伝が好きだ。何が好きかというと、一人一人のドラマがあるからだ。走る、という地味なことをひたすら毎日続けてきた若者たちの表情をあんなにアップで長時間見られるスポーツはない。彼らの裏話を実況中継から聞き、想像力を膨らませ、彼らの日々を思…

目が覚める

どうやら、私の気持ちが被災者になっていたようだ。家と職場の往復で、いまいち全体像を把握できていなかった。ようやく町に出て人と話して色々な話を聞いて、あれ、と違和感を感じた。案外、平気そうだぞ。 新聞やニュースを見ると痛ましい被害の様子が映っ…

唸り声

朝方、家に帰ったら、郵便受けにとってもいない新聞が入っていた。山陰中央新報さんの粋な計らい。こういう気遣いは本当にうれしい。松江の会社なんだ。隣の島根から温かい気持ちを受け取った。 帰りにスーパーに寄ろうかと思ったけど、東日本大震災の時、ス…

余震が十分おきぐらいにくる。こわい。でも、東日本大震災の時は携帯も全く使えなかったから、電波があるだけ全然心強い。田舎だから混線しないのかな。 二十一時五十分に水道止まる。マンションのタンクの底が尽きたのか。お隣の部屋の方がペットボトルの水…

地震

勤務中に大きな揺れ。 最初は震度四で、患者さんの無事をひとまわり確認したその後にグラッとはんぱない揺れがきた。十月二十一日、十四時〇七分。震度六。ジェットコースターが落ちる時の一瞬無重力みたいに胃が浮くような感じがした。廊下にある花瓶が落ち…

寛容

ちゃらちゃらしたものが、あまり好きでない。 はやり廃りに乗っかって、一瞬の華やかさを追うことが滑稽に見えるからだ。そういうものに対して嫌悪感を抱くトガッタ私、が顔を出す。「山ガール」然り、「○○ラン」然り。登山やランニングにおしゃれとか持ち込…

西瓜

マラソンをしている時は、あたまの中が自由になる。必然的にいろんなことをゆっくり考える良い機会になるから好きだ。 一〇キロメートル。バリバリ運動していた昔の私にとっては屁でもない距離だが、今の私にとってはこれが精一杯。でもこの一〇キロメートル…

ふるさと

ずっと行きたかった津和野に行ってきた。絵本作家の安野光雅さんの故郷。石州瓦の優しいオレンジ色の瓦屋根の家々が軒を連ねる。津和野城跡のある高見から眺める津和野の町並みや、その中を黒煙を吐きながらのそのそ動くSLは、安野さんの書く旅のえほん、日…

筍の教訓

私は往々にして、〇か一〇〇か、で考えがちだ。 料理は好きなはずなのに、新年度が思った以上に忙しくて、最近全く料理に気持ちが向かず、納豆卵かけご飯とパクチーラーメンをひたすら食べて過ごしていた。家に帰ってもパタンキュー。時間があっても、ぼんや…

アイマイミーマイン

みりんを変えたら、見違えるほど料理がおいしくなった。 「ひとりでできるもん」の産みの親、坂本廣子さんの講演会を聞きに行き、調味料はきちんとしたものを、とのお達しを受けた。薄々聞いたことはあったし、醤油は鳥取の醤油を。塩も、いいやつを。くらい…

パンドラの箱

看護学校時代、小児の精神科の実習に行ったときに、精神科の専門看護師という人に出会った。臨床心理士も同じチーム内にいた。精神科の専門看護師と、臨床心理士。その違いが私にはわからなかったので、どう違うのか?と聞いた時のその方の返答がとても興味…

ズンチャッチャ

音楽は自由だ。鳥取に来て、今まで知らなかった音楽にたくさん出会った。テレビを見なくなったけど、その分目利きの人から薦めてもらってめくるめく音楽の世界が広がっている。敢えて前情報がないゼロの状態で聞いて、自分がどう感じるか素直に身を委ねる。…

さくら

春は、出会いと別れの季節である。 前は公務員だったのでこの時期はいつも大きな人事異動があって、四月が来ると病棟の雰囲気がガラッと変わったものだ。一年目はそれに一喜一憂していたが、だんだんと慣れてきて、いい人も嫌な人も一緒に働くのは今だけかも…

追い抜く

車で遠出した時に、何台もの車を追い抜いた。前の車よりも早く走りたいと思った時に、右側の車線に車線変更して、ぐっとアクセルを踏む。そうするとスピードが上がって、その車を追い越すことができる。簡単なことだ。タイミングさえ合わせれば良いだけだ。…

地平線

旅に出ると、自分を客観視できる。世界は広いのだと、改めて思い知る。そして、悩んでいたことがばかげてちっぽけなことだったと気付く。 昨日と同じ自分だとは思えないくらい元気になった。 今回の一番の収穫は、自分の力で神戸まで行って帰ってきたという…