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さくら

センタルメンチ

春は、出会いと別れの季節である。

 

前は公務員だったのでこの時期はいつも大きな人事異動があって、四月が来ると病棟の雰囲気がガラッと変わったものだ。一年目はそれに一喜一憂していたが、だんだんと慣れてきて、いい人も嫌な人も一緒に働くのは今だけかもしれない、と思うようになってきた。だからこそ、今を大切に。

 

新しい職場では、小さなクリニックなのでそんなに大きな変化はないかと思っていたが、大好きな先輩が遠くへ行ってしまった。さみしいというよりは、清々しい。潔い。私と同年代で今からさらに新たな勉強を始めるのは、結構勇気がいることだ。オールドミス予備軍仲間がまたひとりいなくなった。いなくなることは寂しいけど、心のどこかで準備していたから大丈夫。いつまでも先輩に頼ってはいられない。もっとしっかりしなくては。この場を守りたい、という思いが芽生えたのはこの一年間での成長だろう。

 

この町にきて、三度目の春が来る。昨年は寮のみんなを送り出し、よそ者の私がただ一人この町に残った。そして、また今年、大好きな人がいなくなる。自分が送り出す側にいることが、なんだか不思議だ。新しい人は誰も入ってこないけど、新しい季節はわくわくする。北の国からのように、寒くて静かでいつもくすんで見えるさみしい冬が終わって、色が戻ってくる。桜は、冬を越えたご褒美に、盛大に咲き誇る。

 

大人になるということは、出会いと別れに慣れること。それでも、ぐるりと季節が巡っていくのを感じながら、ひとつひとつ、今目の前の瞬間をていねいに過ごすこと。

 

「いつかは死ぬとわかっていながら

 永遠なんてないとわかっていながら

 それでも人は 愛するということ

 あなたの手のぬくみ いのちということ」

 

不可思議くんのことばが心に沁み入る、二〇一六年、春。