アイマイミーマイン

みりんを変えたら、見違えるほど料理がおいしくなった。

 

「ひとりでできるもん」の産みの親、坂本廣子さんの講演会を聞きに行き、調味料はきちんとしたものを、とのお達しを受けた。薄々聞いたことはあったし、醤油は鳥取の醤油を。塩も、いいやつを。くらいは思っていたけど、みりんはここ、調理酒はここ、と名指しで言っていたので、とりあえず眉唾的な感じでとりあえずその通り買ってみた。感想は、みりん風調味料と本みりんが、こんなにも違うとは。なんてことはない卵とじが、本当に香ばしくて美味しくなった。砂糖も入れないのに甘みとまろやかさがにじみ出ていて、あったかくても、冷めてもうまい。みりん自体、ぺろりと舐めたら酔っぱらいそうな酒らしさ。良い調味料は、ドボドボ入れずに少しで十分、だそうだ。その通り。家族みんなの分となると多少家計を圧迫するかもしれないが、一人暮らしの身には全然手が出る値段。飲み会を1回我慢して、毎日の料理がこんなに色づくならば、俄然後者を選びたい。

 

家の近くに、全国のこだわった調味料や食材が売っているお店がある。坂本廣子さんも絶賛のお店で、彼女が全国から取り寄せている調味料がその店には全て揃っている。店のおばちゃんが全ての食材にとてつもなく詳しくて、こだわっているのがわかる。北海道のよつ葉牛乳は、二九九円。本当は運送費を含めるともっと高いけど、売れ残ることを考えると、妥当な線でこの値段設定をしているそうだ。大山の白バラ牛乳だって、東京で買えば三〇〇円近くする。そう考えると、地産地消は理にかなっている。特に、山陰は宝の宝庫。目利きになって、地元のオイシイを、もっと知れる人になりたい。

 

坂本さんの、ひとりでできるもんの裏話がおもしろかった。NHKのディレクターが、バリバリ良妻賢母推進な人で、台本が「まいちゃん、いいお嫁さんになれるね」などの古くさい台詞だらけで、坂本さんが赤ペンでダメだししまくったという。エンターテイメントとエデュケーションの間を取って、「エデュケイメント」。楽しく、子どもだろうと料理はだしから取るし、魚もさばくなど一から自分の手で行う。

「自分の食を、自分の手の中に持つ」こと。ひとりでできるもん。これが、延いては自尊感情にも繋がって行く。奥深い。私には完全にエンターテイメントの部分しか記憶に残っていないが、今でもアイマイミーマインといえばこの番組を思い出す。

 

ひとりで、できるもん。思えば今も、日々この積み重ねである。