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民藝とトットリと私

事前に民藝関連の本を二冊読み、完全なる付け焼き刃で飛び込んだ日本民藝夏期学校は、思っていたよりも若い人が少なかった。後で聞いたところ、これでも例年より多いそうだ。

今回のテーマは「バーナード・リーチ 東と西を超えて」。英国人で画家・陶芸家であるリーチ氏が主役で、耳鼻科医であり鳥取民藝運動の中心人物である吉田璋也氏や鳥取との関わりなどを学んだ。座学と、鳥取民藝美術館、県立博物館でのリーチに関する催事、通常非公開の旧吉田医院などを巡った。

系統立てて知識を得ることも、解説付きで展示を見ることも楽しかったし、貴重な映像、リーチ氏の肉声も興味深かった。しかし、一番面白かったのは懇親会だった。立食パーティ形式の懇親会はアウェーすぎて緊張したが、色々な方と話すことができた。東京から、青森から、徳島から。同じ民藝というものについて老若男女が熱く語っている姿はぐっとくるものがあった。そして、普段だったらなかなかお話することができない窯元さんや民藝界の方と無礼講で肩を並べてお話できることはワクワクした。

この感じ、なにかに似ているなあと思ったら、昨年参加した助産師会出版の研修合宿。ひょいと参加してみたら、十五名程度の参加者のほとんどが全国の助産師会会長などの偉い方。私のようなぺーぺーは一人もおらずものすごく緊張したが、諸先輩方とお酒を飲み、一緒に温泉に浸かり、助産観や生い立ちなど突っ込んだお話もじっくり伺えるなんとも贅沢すぎる時間だった。同じ参加者として、自分の意見も肩を並べて言える場。妙な親近感と親密感。尊敬できる大先輩との交流は、仕事のモチベーションに繋がった。

一緒に同じ学びを得、土地を歩き、同じ空気を吸って同じものを食べることで、人は距離が縮まり親密になる。テーマ自体も勿論だが、そこでの出会いを大切にし、今後も繋げていくことが研修合宿の醍醐味だと感じた。

民藝夏期学校への若者の参加者を増やすにはどうしたら良いか。この質問が何度か飛び交っていた。友人のSNSを見ると、県立博物館のリーチ展や民藝美術館のリーチと吉田璋也の展示自体には足を運んでいる人は実は結構いる。民藝に興味がある人は若者でも結構いて、別に夏期学校に参加せずとも取捨選択して自分の欲しい情報を得ることはいくらでもできるし、実際している。私のように無知な者にとって、こうしてリーチについて腰を据えてじっくり向き合える二日間はとても良かったが、そうでない人が敢えて夏期学校に参加する意味ってなんだろう。二万円前後という安くはない参加費と、働きながら二、三日間という休日を費やすことは、定年後でお金と時間に余裕がある方のそれとはまた違うよなあと確かに思う。

このことをここの所ずっと考えていたが、夏期学校の魅力はやっぱり、「民藝が好き」で共通した老若男女が交わること、そしてそこでの化学反応なのではないかと思った。若者ばっかりでもなんだかとがって偏っているし、老人ばかりでも先細りだ。普段だったら相容れない人達、世代、職業の人達が融合して意見を交わせる場があることがやはり一番の醍醐味だと思った。それが夏期学校ならではの付加価値で、そこを膨らましていったら若者も増えるのではないかと僭越ながら思った。あとは、間口を広げること。どんな入り方でもいいから、民藝に興味を持った人をあたたかく迎え入れてくれるやさしい空気感が、私にはとてもありがたかった。

これは、移住者と土地の人との関係とも少し似ていると思う。土の人はよそ者を排除せずにあたたかく受け入れながらも、土地の伝統文化や誇りを伝えていく。よそ者、風の人は土地の文化や歴史に敬服しながらもよそ者だからこそ見える視点を忘れず新しい風を吹き込む。お互いに相手を受け入れ、変化していくことが死なない文化を作っていく。

また、私はこの夏期学校に参加して、自分の住んでいる鳥取民藝運動を改めて知ることができた。リーチ氏が吉田璋也氏と書簡をやりとりし、砂丘の絵を描いた事実を知り、リーチ氏が指導したという取っ手のついたマグカップをより愛しく感じることができた。そして、県外の方がわざわざ足を運ぶ窯元さんに、ちょっと車を飛ばせば行ける環境を改めて恵まれていると感じることができた。自分の住む地を知ること。そして、それに誇りを持つことが、地域活性化にも繋がる。地元の高校生は参加費半額とかにして若い世代にも沢山参加してもらうのも面白い。

 

民藝の趣旨の一つに、「地方性」というものがある。

「地方性。それぞれの地域の暮らしに根ざした独自の色や形など、地方色が豊かである(日本民藝協会HPよりhttp://www.nihon-mingeikyoukai.jp/about/purpose/)」

 

本当に、これだよなあと思う。今回、全国各地から民藝ファンの方が鳥取の地を味わい、鳥取の文化を、鳥取の食を味わって下さっている姿に、私は嬉しくなった。これが鳥取です、と誇らしくなった。鳥取は砂丘と鬼太郎だけじゃないと、今なら心から言える。

これが、よそ者の私から見た鳥取の姿で、新参者が眺めた民藝の姿。もう少し民藝について勉強したらまた違ったものが見えてくるかもしれないが、大先輩が教えてくれた、民藝の父柳宗悦氏の言葉——

「今 見ヨ イツ見ルモ(いつ見るときも、初めて「今見る」想いで見ること。うぶな心で受け取ること)」

この心を大切に、これからも自分なりの距離感で民藝と関わっていきたい。ドキドキしながら迎えた今回の夏期学校での新鮮な感情のゆらぎを、いつも心に留めながら。たくみ割烹の牛すすぎ鍋に大の大人が大はしゃぎだったことも良いおもひで。

日本民藝夏期学校http://www.nihon-mingeikyoukai.jp/society/project/summer/

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