ごはんどき

大皿にできた料理をざっと盛り、それをみんなでつついて食べる。足りなければおかわり自由で、さあどうぞ、というやさしくて自由な雰囲気。お話しながらみんなでつついて食べるごはんは、楽しさも格別だ。一人や二人増えたってたいして変わらない。あるものを、みんなで分け合うという懐の大きさが安心感を倍増させる。

ごはんで一番感動したのが、神戸にある毛利助産所だ。

妊娠中や産後の食生活が大切だと、産科で働いていて切に感じる。乳腺炎を繰り返す方は、食事をさっぱりごはんに切りかえたら嘘みたいにすっきり治ったことがあった。貧血ならば鉄分を、乳が詰まればさっぱりごはんを。野菜中心の和食を。口にするのは簡単だが、妊産婦さんがこれなら自分もできる、と思える例えばの一品を提案できるかが結構ミソだと思っている。いかに抽象的ではなく具体的に伝えるか。そう思って、自分自身も食生活は意識している。

食生活改善を謳っている助産院も多いが、どこもまあ普通の和食だなという感じだったが、毛利助産所の食事は、ひと味違った。何が違うかというと、気取らなさ、生活感、消化の良さ、適度なゆるさ。二泊三日の泊まり込みの研修で朝昼晩と六食ご馳走になったが、とにかく消化が良い。欲張りな私は山盛りおかわりして腹が膨れてふうとなるわけだが、次の食事の時間までにはスッキリ消化して腹ぺこになっている。コンセプトは、野菜中心、肉魚は少なめ、ではあるけれど完全なるマクロビやベジタリアンではなく、良いお魚が手に入れば鯛ごはんがでーんと出たりする。水菜と八朔のサラダとか、大豆ミートの生姜焼きとか、これとこれ組み合わせたらこんなにおいしいんだ、の連続。朝は毎日決まって茶粥。大きなお鍋に山ほど作っておかわり自由。お米とさつまいもとほうじ茶と塩のみのサッパリお粥で水分をしっかり取る。栄養士さんではなく主婦のおばちゃん数名が交代で作っているのだけど、メニューもだいたいしか決まっておらず、あとはそのおばちゃんの裁量で冷蔵庫にあるもの、旬の食材、その時に手頃に手に入る食材で作っておられる。毎日のごはんなのだから、気取ってなくて、余った野菜は次の日のメニューにつなげる、そういう力量こそが本物の料理上手だと思っている。患者さんには小鉢に分けて提供するが、スタッフの分は大皿にどんと盛り、おばあちゃん先生から若先生、学生や私のようなよそ者研修生まで同じ皿をつついていただく。一年以上前の出来事だが、今でも自分の指針となる理想のごはんである。

最近行った民藝咖哩うんすけさんのランチビュッフェも同じものを感じた。さりげなく作っているし、作っているそばからまた次の一品が追加されたりする小料理屋感や大皿から好きなだけ取って良いあたたかさ。そして、一品一品がほんとにおいしい。気取ってないし食材自体はふつうのものなのに、組み合わせや味付けがとても新鮮で、どんどん食べてしまう。さらにうんすけさんは、民藝と謳っているだけあってお皿は大分の小鹿田焼きや島根の出西窯、森山窯、袖師窯など味のある器で統一されている。自分の理想とする「ごはんどき」の光景が現実となって目の前に繰り広げられていて、とても感動した。

一日三度のごはんどき。働いていると悲しきかな、どうしても腹を埋めるための詰め込みの食事をすることをやむを得ないときもあるが、できるだけこうした良いイメージを大切にして、理想のごはんどきの時間を多く取れる毎日にしていきたい。(写真はうんすけさんのおばんざいランチビュッフェon小鹿田焼き。おいしかったー)

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