東京

急にお休みができたので東京に帰ってきた。服に小さな水玉のような丸い雪がまとわりつく鳥取を後に、弾丸帰省。遅れてきたお正月。飛行機がちゃんと飛んでくれるようでほっとする。最近、飛行機とはてんで相性が悪い。飛行機が離陸して、雪雲の中に突入するとぐらぐらと揺れる。これがずっと続くと厳しいな、というほどのぐらぐら。そういえば、先日鼻炎で鼻が完全に詰まった状態で飛行機に乗ったら、のたうち回るほどの耳痛に襲われたのを思い出した。航空性中耳炎というらしい。車で十二時間かかる距離を一時間ちょっとで飛んで行くだなんて、やっぱりとんでもない魔法みたいなことだよなあとぼんやり考える。

もったりとした雪雲を抜けたら、雲の上には眩しい太陽が光っていた。雲の上は、晴れなのか。さっきまでのどす黒さは、すべてこの雲のせいだったのか。延々と続く雲と太陽のみの世界は、それはそれは天国みたいに明るくて、不思議な光景だった。目の前に見えているものがすべてに感じるけれど、この雪雲みたいに、一枚なにやら扉というかフィルム的なものをはがせば、案外こんな風に全く違う世界が広がっているのかもしれない。普段はトイレに動きやすい通路側の席にするのだけど、今回はなぜか窓側にして正解だった。いつもは夜勤明けで景色なんて見ないで爆睡するのに、今日は休みだったから外を見る余裕があってよかった。そんなことを考えているうちに、結局爆睡。東京は晴れ。暑い。

 

東京は2ヶ月ぶりだ。いつもと違うルートで実家へ帰る。中野坂上の、地下鉄の定期券売り場だった所にスタバができている。中学の時も高校の時も、そこで定期券を買っていた。うちから一番近い定期券売り場だったから常連だった。私が高校生の時に初めてバイトしたパン屋さん兼カフェのすぐ近く。改札をでてすぐだし、スタバだし、強敵ではないか。生存競争に敗れたかなとこわごわ覗くと、ちゃんとパン屋さんもあった。よかった。あったものがなくなることは、寂しい。新しいものが出来ると前何があったのかわからなくなる。当たり前のように、元定期券売り場のスタバでコーヒーを飲んでいるサラリーマン風の人々。頬杖を付いてなにやら深刻そうな顔して本とか読んでいるけど、そこは定期券売り場だったのですよ。と、こっそり見つめる。

ほとんどの人が、黒かグレーのコートを着ている。黒か、グレー。素っ頓狂な色の外套を着ている人はいない。大学生の頃、塾講師のバイトをしていた時に、スーツの上に紫色のコートを着ていた友人が、マリオみたいな風貌の塾長にこっぴどく怒られていたのを思い出す。黒かグレーの中に、目の覚める紫がいたらとても綺麗なのにな。そういう私も、グレーのコートを着ている。端から見たら、私も黒かグレーの人。走馬灯のように昔の記憶が蘇る。私の故郷は、ここ。

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