お産のこと

9分後

あの時、あの判断でよかったのかな、と今でもあの場面を鮮明に思い出す。 私たち助産師は、チームで動いている。自分の時間帯で生ませてあげたいという意識が働くと、絶対に焦る。完全に自分のエゴだ。前にそれで何度も失敗している。早く生まれるような助言…

抜きどころ

久しぶりに母たちのサロンを開催した。続けていくのは大変だという印象があったが、抜くところを抜いて、自分自身も肩の力ゆるゆるで場を持ったところ、びっくりするほど楽しかった。そして、最近ずっと考えているコミュニティーナースの産科版のヒントが少…

かすがい

頑なだったお母さんが、迷いに迷って決めた祖父母宅への里帰りを経て柔らかく変化していた。 「ひとりでいると全部自分でやらないとと思うし、世話になることは申し訳ないと思っていたけど、案外みんな赤ちゃんにどんどん構ってくれて、おじいちゃんにも来て…

ごはんどき

大皿にできた料理をざっと盛り、それをみんなでつついて食べる。足りなければおかわり自由で、さあどうぞ、というやさしくて自由な雰囲気。お話しながらみんなでつついて食べるごはんは、楽しさも格別だ。一人や二人増えたってたいして変わらない。あるもの…

ナイスアシスト

取り上げ婆に、誰がなるかという話。 とにかく最初は脇目も振らず、赤ちゃん一〇〇例取り上げなさい、と言われていた頃。思えば一例でも多くお産を取り上げたい、と必死で突き進んでいたように思う。春から新人さんが来て、昔の自分を思い出す。お産は、チー…

ご指名

ご指名というものを、受けた。クリニックに勤務して三年目にして初めてのことだ。二歳違いでお子さんを産む方が多いので、今年の目標としては自分が一人目のお産に関わった方が経産婦さんになった姿、その経過や変化をみたいと思っていた。しかし、いかんせ…

つながり

お産に立ち会ったお父さんは、多くの場合生まれてくる赤ちゃんに気持ちが向くことが多い。「オギャー」という一声で今までの不安や疲労が吹き飛び、全ての感情が赤ちゃんに集約するように感じていた。しかし、先日立ち会われたあるお父さんは違った。 「お腹…

黒子の葛藤

出産を終えた産婦さんに、マッサージしながらお産の振り返りをする。肌に触れながら目線は合わせずに交わすことばのやりとりは緊張感から解放されるのか、思いもかけないことばが飛び出してきて、おもしろい。お産に一緒に立ち会っている人(主に夫や実母)…