つながり

お産に立ち会ったお父さんは、多くの場合生まれてくる赤ちゃんに気持ちが向くことが多い。「オギャー」という一声で今までの不安や疲労が吹き飛び、全ての感情が赤ちゃんに集約するように感じていた。しかし、先日立ち会われたあるお父さんは違った。

「お腹がだんだん凹んでいって、最後に赤ちゃんが出てきた」

超冷静…。私自身、出産の瞬間は下の方に集中しているのでお腹の変化について考えたこともなかった。だから、全体像をしっかりと捉えてそれをことばにしておられるお父さんにとても新鮮な感動を覚えた。

赤ちゃんが出てきたから、その分今まで赤ちゃんがいたお腹はぺしゃんこになる。そりゃあそうなのだけど、ビジュアルとして、お腹の中に赤ちゃんがいるパツンと大きなお腹と、生まれた後のぺしゃんこのお腹。その二つの画像しか自分の中で存在していなくて、その過程や経過がつながっていなかった自分に気づいた。できるだけ傷を作らないように、とか、呼吸法を誘導しなくては、とか、技術やすべきことで頭の中がいっぱいになっていたのかもしれない。

赤ちゃんは、狭い骨盤を通って、生まれてくる。頭が頑張って骨盤を通った後、かわいいお尻や足が続いて骨盤を通る。その分、赤ちゃんがいることでふくらんでいたお腹は、徐々に小さくなっていって、一番大きな頭が出たら赤ちゃんはドゥルンと一気に外の世界にやってきて、お腹の方は一気にぺしゃんと凹む。それが、生まれるときのお腹側の変化。

お産にも少しずつ慣れてきたところで、新鮮な気持ちをどこかに置いてきてしまっていた。初めてお産を目にするからこその新鮮な視点に大事なことを教えてもらった気がする。気持ち新たに、助産師三年目、心して。

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