文殊の知恵の輪

初めて鳥取で友人の結婚式があった。同じような時期に同じ関東から鳥取に来た、同年代の友人。似たような感覚を持っているから楽しくて、よく集まっていた飲み友達。みんなで豆を育てたり、スイカの収穫を手伝ったり、大晦日は毎年みんなで集まって除夜の鐘を鳴らした。

 結婚式は、なんとおじいちゃんが残した彼の家の敷地全面を使った手作り結婚式だ。この家が尋常じゃなく広い。趣のあるザ・古民家に蔵、農具を収める納屋など、徒歩で移動するのは大変なほどの広さ。そこに関東から鳥取から七〇人程度を招いての一大イベント。業者はケータリングで食事を頼んだくらいで、後は全て新郎新婦とその知人たちで作り上げていた。フラッグを木に張り巡らし、モンゴルのゲルのようなテントを張り、DJブースから心地よい音楽がお隣さんを気にせず大音量で流れる。農業用のコンテナを並べた上に板を敷いたテーブル。秘密基地のような納屋では、プロジェクターで新郎新婦の思い出映像が流れ、新郎新婦はトラクターに乗って登場…。ケーキカットの代わりに鏡開き(新郎は、農閑期は酒蔵でバイトしていた)からの餅つき、ゲームは柿の種飛ばし、スイカの早食い、梨の皮長剥きなど、鳥取らしさ満点の種目で大いに盛り上がった。優勝チームは全員に新郎新婦が作った米が後ほど郵送されるという徹底ぶりも素晴らしかった。

 私はスタッフとして微力ながら関わらせてもらったが、こんな大掛かりなイベントを手作りでできてしまうことに感動した。もはや、小さなフェスだった。マンパワーって計り知れない。「お金をかけず、知恵を絞る。今回一度きりのゴミにならないで、ずっと使えるものを」というコンセプトもとても良い。カップは水場にて自分ですすいでリユースする。スタッフ間の目印にお揃いTシャツを作る話も出たが、使い捨てにならないようにとの想いから考え留まった。ドレスコードはデニム。わざわざ買わずとも、デニムなら家に一つは持っているだろう、とのこと。知恵を絞れば、あるものでこんなに楽しい時間を作り出せるのだと感動した。

 朝早く集合して、リハーサルして準備しているうちに徐々に人がちらほら集まってくる。空っぽだった場所に人が増えていき、いつもの場所が全く別の場所に変化していく光景がとても新鮮で面白かった。祭りというものは、お客さんがいて完成するのだとしみじみ思った。盛り上げてくれるお客さんの存在が有り難く、私達自身もとても楽しかった。客と運営側という明確な線引きはなく、みんながなんとなく友達という一体感も良かった。とても気持ちのよい時間だった。なによりも、鳥取生活三年ちょっとで、こんな素敵な会を作り出せるほど、人と丁寧に繋がって信頼関係を築いてきた友人が天晴だと思った。

 三人寄れば文殊の知恵。皆で考えればなんとかなる。お金を払えばなんでも解決できる世界にいると、何も考えずその選択をすることに慣れてしまう。時間を節約するためにパッと済ませる。そこに伴う無駄とかゴミとか、終わってしまえば視界から消えてしまうものについてはあまり考えた事がなかった自分に気づいた。植樹で植えていた月桂樹の木の成長を見守りながら、皆で知恵を絞って作り上げたあの心地よい空気を折に触れて思い出したいと思う。おめでとう。お幸せに。

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